ドラマ 実話

tabako_kitsuen

お客様との待ち合わせが午後1時だった私は昼ごろに

会社を出ました。

何度となく乗りなれている日比谷線での出来事でした。

視線の先に一般の方とは違う人が乗車していました。

年の数から言えば 50代の女性。

着ているものは、決して良くはなく 少し汚れている感じ。

髪の毛は 自分でカットしたような丸坊主。

毛先も不ぞろいで後頭部には 5cmぐらいの残り毛。

顔は真っ黒に日焼けして 手は傷だらけ。

ビニール袋を三個ほど 手に持ち。

 ここまで聞けば ただ浮浪者に思うでしょうが。

その人の首には大玉の数珠のようなネックレス。

それが 5~6個も。

 私としては興味のある人で大変 気になりました。

ずっと一緒に居たい気持ちでいっぱいなのですが

お客様の最寄駅である 草加駅で下車することに

なりました。

電車に揺られる事 1時間。 私の体のニコチンも

切れ 駅前の喫煙所でタバコに火を点ける事にしました。

タバコも半分も吸い終わった頃。

なんと 先ほどの電車での女性が私の隣に居たんです。

そして わけの解らない言葉で私に話かけて来たんです。

話している言葉は意味不明。

まるで宇宙人のようです。

私も 何度と聞き返すのですが 解らず、最後は

解らないまま うなずいていました。

ただ 一つだけ はっきりと聞き取れた言葉がありました。

太い声で

「状況を理解しろ」 と言う言葉でした。

とっさに 私は ( この人はタバコが欲しいんだと )と思い

私のタバコを差し出しました。

しかし、受け取る事はありませんでした。

次の瞬間 おもむろにビニール袋の中から自分のタバコを

取り出したのです。

(そ~か ライターか?)と思い すぐに私はライターを貸して

あげました。

ひと安心 (ふ~う)

同じ駅で下車したのも、タバコを吸うのも すべて私との

行動が重なっただけの偶然なんだと心を撫で下ろしました。

先を急ぐ 私は駅前よりタクシーへ乗り 運転手さんに

行き先を伝えたました。

その瞬間 

彼女は乗り込んできたのです。

                 遭遇者    橋本 靖彦

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