全国を飛び回るなかで出会った“しっくりくる街”

さまざまな業種の方が集まる会合は、人脈を広げるためにも貴重な機会なので、なるべく出席するようにしています。先日も、とある懇親会にお邪魔し、いろいろな方と名刺交換をさせていただきました。

その時のことです。私の名刺を受け取ったある方が、「銀座に事務所があるんですか!?　すごいですねえ！　銀座の物件をメインにやってらっしゃるんですね」と、びっくりした様子で私の顔をまじまじとご覧になったのですね。
「ああ、またか……」と思いました。

相談者にも自分にも、利便性がもっともいい場所

当NPOの事務所は銀座にあります。この地を選んだ一番の理由は、利便性でした。地下鉄は東京メトロも都営線も通っており（最寄りは日比谷線の東銀座駅です）、少し歩けばJR有楽町駅や新橋駅もそう遠くはありません。相談者の方はあらゆるエリアからいらっしゃるので、どの方にとってもそれなりにアクセスのよいところはどこか。また、自分が士業の先生方や同業の方に相談に伺う時に行きやすい拠点はどこか、と考えた結果、銀座三丁目に落ち着きました。

生まれも育ちも東京の私は、元々、銀座の街が好き、というのは本当です。歴史と文化があって、簡単には時代に流されない落ち着きがあるのがいい。お店を営んでいる方も、そこを訪れる方も、成熟した大人が多く、スマート。そういった方を見ているだけで自分も勉強になりますし、何より、歴史と文化が醸し出す銀座の街特有の空気感は、私にとっては、とても居心地がいいものなのです。

人はやっぱり、見た目で判断してしまう？

「銀座に事務所があるから銀座の物件を派手に回す仕事をしているに違いない」と、人は名刺から判断してしまうものなのでしょうか。「またか」と書いたように、こういった勘違いをされた経験は、実は何度もあります。
「銀座」という言葉が持つ特別な響きはもちろん、ここが日本の経済が回る中心地のひとつであることも理解していますが、だからといって、私自身の仕事は地道なものです。事務所は10坪くらいの広さで、最新の設備のビルというわけではありません。相談者は深刻な不動産問題を抱える方が大半という性質上、私が現地に伺うことも多く、文字通り、日々、問題解決のために全国を飛び回っています。
つまり、銀座の事務所はあくまでも仕事の拠点であり、また、仕事上のふるさとのような、心の安寧をもたらしてくれる場所。“華やかな街・銀座でお勤め”というステレオタイプ（？）なご想像とは……意味がだいぶ異なります。

その時の自分の気持ちにしっくりきた街の匂い

私はそういった仕事の仕方が大好きなのです。東奔西走するなかで、自分の感覚にピタリとはまるような土地に出会えることもあります。最近の話で言えば、金沢がそんな場所でした（写真は金沢駅です）。

リースバックの案件で、ずっと東京にいながらやり取りをしていましたが、やっと訪問のタイミングができたので、先日、初めて彼の地に赴きました。
2024年1月に起きた能登半島地震では、金沢市も震度5強の揺れを観測。一部の地域で液状化や建物の損壊が発生して、被災された方も非常に多かったことはまだまだ記憶に新しい出来事です。「街はいったいどんなふうになっているのだろう？」。想像できないままでの訪問は、多少の不安もあったのですが……、しかし、“現場”は違いました。誤解なく言えば、駅から外に出た瞬間に感じた街の空気（街の匂いというのでしょうか）は明るい兆しを感じさせてくれるもので、なぜかそれが、その時の自分の気持ちにしっくりときたのですね。
結果、私は、その一瞬で金沢の街を気に入ってしまったのです。

金沢と銀座は少し似ているのかもしれない

初めて会った相談者の方も、そんな街にぴったりの、穏やかですてきな方でした。少し難しい案件でしたが、物件に対する思いも直接伺うことができ、この方のためなら気持ちよく支援させていただこうと決心することもできました。
街が人をつくる、ということなのでしょうか、もしかしたら、金沢は、少し銀座に似ているところがあるのかもしれません。

ちなみに、私は手続きなどの関係で現地の役所に行くことが多いのですが、金沢市役所の建物（下の写真）はモダンながら温かみのある建築で、それも気に入った理由のひとつとして挙げておきたいと思います（食べ物、お酒の美味しさは言うまでもありませんが）。