住宅ローン問題支援ネット の高橋愛子です。
先日、不動産業を営む知人がこんなふうに言っていました。
「お客様からの相談に対応するなかでよくあるのが、不動産価値の話なんですよね。家やマンションを買う時に、市場価値をどこまで意識したらいいですか、ってよく聞かれるんです」
特に都心部の不動産価格が異様な高騰を続けるなか、まず家の市場価値から考えて購入を検討したい、というのは理解できる話です。不動産は紛れもない大きな資産。どうせ買うなら価値の高いものを選びたいと思うのはおかしいことではありません。
ただ、「家の価値」と言ったとき、それは「市場価値」だけを指すのでしょうか。
個人の感情は一切反映されない「市場価値」
耳慣れない言葉かもしれませんが、不動産価値には、「市場価値」と「使用価値」という概念があります。
ではまず、「不動産の市場価値」とは何でしょうか。
定義として言えば、「不動産市場で、第三者に売却する際に成立すると見込まれる価格」のことで、つまりは「一般的な購入者がその物件に対して支払うと想定される金額」を指します。その価格は需要と供給のバランスによって決まり、近隣の取引事例や公示価格、路線価などから算出されます。金融機関による担保評価や資産査定の際にも重視される客観的なものである必要があり、そこには個人の感情は一切反映されません。
たとえば、「〇〇駅から徒歩5分。土地25坪、建物30坪、築10年の戸建ての相場が4,500万円」というようなもの。これがいわゆる「市場価値」です。
「使用価値」とはプライスレスなもの
では一方の「使用価値」とは?
それは、「所有者や家族にとっての暮らしやすさ、利便性、思い入れなどの価値」だと思います。いずれ売却することが前提ではなく、あくまでも「自分が住みたいかどうか」で決まる、いわばプライスレスな価値が「使用価値」ではないでしょうか。
「使用価値」には、家族との思い出や、住み慣れた家への安心感、住環境、家へのこだわりなどが大きく影響します。たとえば子どもの通学に便利だったり、近所に親族が住んでいるから安心、庭で家庭菜園ができる、趣味に特化した間取りになっている、など、先ほどの「市場価値」には反映されにくいものですが、しかしこの価値は、その家に住み続けるがどうかの判断で非常に重要な部分を占めることになります。
ローン完済まで住むなら評価損は気にすることはない
「売却すれば市場価値は3,000万円。売却益が得られるけれど、子どもたちの通学や家族の生活を優先して、いまは売らずに住み続けることにした」
「広さを優先して、市場価値の低い土地を購入。そこにライフスタイルに合わせたこだわりの注文住宅を建築した」
これは、使用価値が市場価値を上回ったという状態です。
住む場所は生活の質や人生設計にも大きく関わってくるため、短期的な市場価格の変動よりも、長期的な居住満足度を優先するケースは多いのです。そういった面で考えれば、仮に住宅ローンがオーバーローンの状態でも完済するまで住み続けるなら評価損などは数字上の問題に過ぎません。一切、気にすることはないわけです。
外野のコメントはどちらの価値から?
これだけ不動産価格が上がっていると、いざ「家を買おうかな」とつぶやいた途端、周囲の人たちが一斉にあれこれアドバイスをしてきた、という経験、皆さんはありませんか?
私は不動産業界の人間なので、たとえば知人が「△△エリアのマンションを買おうと思ってるんだけど」と言ったことにどうしても専門的な目でコメントを発してしまうことがあります。
「そのエリアの物件でその価格は高すぎます!」とか、つい言ってしまうんですよね。事程左様に、とりわけ不動産に関しては、往々にして外野はあれこれうるさいものだと思います。でも、実はこれこそが、「市場価値だけでものを見ている」ということなんですね。
こだわりの家にネガティブ評価が…
当NPOにいらっしゃる方は、不動産売却についてのご相談がほぼ9割ですが、売主の立場に立って「使用価値」を考えると、それが持つ意味はとても重いものだと感じます。
終の棲家としてこだわって建てた家は、本人や家族にとっては使用価値の高いものです。でも、趣向性が強すぎる家は、一般的には売りづらい。一般市場でニーズが高いのはどうしても区分マンションや、「このエリアで3LDK、何千万円台」という市場価値ベースのわかりやすい物件です。
当NPOの相談者にも、終の棲家にこだわって建てた、広い、部屋数も多いログハウスに住んでいる方がいらっしゃいました。ご本人は非常に気に入って20年近く暮らしてきましたが、残念ながら家を売らねばならない状況になってしまい、いざ不動産会社に相談しはじめたところ、言われたのは「広すぎる」「部屋が多すぎる」「ログハウスはそんなにニーズがない」「更地にしないと売却は難しい」といったネガティブなことばかり。ショックが冷めやらぬまま、相談にいらっしゃったんですね。
家は、その人の一生を形作る基盤になる
自分にとって使用価値の高い家を売却するのは、実際、簡単ではありません。でも、かといってこれまでの暮らしに伴う満足感や思い出はプライスレス。お金に換えられない大切なものです。暮らしによって、家族によって、環境によって、人生は変わります。そのくらい、家というのは人の一生を形作る基盤になり得るものです。
考えるべき本質は、自分軸をどこに置くか
冒頭の「市場価値」と「使用価値」の話からいろいろと思考を巡らせてしまいましたが、改めて、家を購入する時に考えるべき本質は、「自分にとって何が大切か」「自分軸をどこに置くか」ということだと思い至りました。外野がどんなアドバイスや意見を言ってきても、自分軸で考えることが大切で、市場価値ベースの万人受けを気にする必要は、私は、ないと思います。
いまは価格が高いから、とか、懲りすぎたら売れなくなるとか、そういうことは考えずに、使用価値に重きを置いて暮らす自分や家族が満足できていれば、それはとても幸せなこと。そういう視点も大事です。
先ほどのログハウスの方は、偶然こういった家を探していた方と奇跡的な巡り会いがあり、家は競売になることなく無事売却できました。万人に受けなくても、「この価値をわかってくれる一人がいればよい」という考え方もあるのです。
不動産情報ライブラリの活用
ちなみに、家を買う時の情報収集ツールとしていまとても活用されているのが、「不動産情報ライブラリ」というウェブサービスです。「不動産の取引価格、地価公示等の価格情報や防災情報、都市計画情報、周辺施設情報等、不動産に関する情報」を見られる国土交通省のサイトで、登録などしなくても、誰でも無料で使えます。
不動産業者に任せきりの情報だけでなく、検討しているエリアの環境情報を自分でより正確に得られますから、自分軸を形成するためにも一見の価値があると思います。
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