住宅ローン問題支援ネット の高橋愛子です。
任意売却やリースバックの案件を長年手がけている私ですが、レアなケースのご相談をいただくことがあります。ちょっと専門的な内容にはなりますが、皆さんにもぜひ知識として知っておいていただきたいお話だったので、ブログで書かせていただきますね。
突然届いた「再売買予約契約解除通知書」
リースバック契約を結ぶ際、数年後にその物件の買戻しができる「再売買予約契約」を同時に締結することがあります。今回ご相談にいらした方(仮にXさんとします)は、都内で長く住んでおられた戸建てを、リースバック業者を通して4,000万円で売却。3年間の定期借家を経て5,000万円で親族が買い戻す(再売買する)という契約を結びました。その際、手付金の250万円を業者に支払ったそうです。
その後、Xさんは普通に家賃を払って住み慣れた家で生活。2年半が経った、定期借家の契約満了日の半年ほど前に、「定期借家契約終了」の通知が届きました。元々3年間の定期借家契約ですから、それ自体は当然のことです。
しかし問題は、それと同時に届いた「再売買予約契約解除通知書」でした。3年前のリースバック契約の時に「再売買契約」を結んだにもかかわらず、それを解除してください、という突然の知らせに、何のことだか状況を理解できないXさんが焦って当NPOに相談にいらしたのです。
契約書に「期限」が書かれていない
「売買予約契約解除」とは、文字通り、再売買契約を解除することで、これが履行されればXさんは定期借家契約が終了する時点で退去しなくてはなりません。私もさすがにそこまでの無理な話はないのではないかと思い、契約書をつぶさに確認させていただいたところ――「手付解除期限」が書かれていないことに気づきました。
「手付契約」という言葉、ご存知でしょうか。いわゆる「手付金」についての契約のことで、不動産売買では売買契約締結時に買主から売主へ代金の一部(通常5〜20%)を支払う行為を指します。今回のXさんの「再売買契約」の件では、先ほど書いたように、Xさんからリースバック業者に「買戻し」の手付金として売買代金の5%にあたる250万円を支払っていました。
手付金「放棄」か「倍返し」で解約はできる
手付契約には4種類あり(図表参照)、履行の条件については一般的に契約書に明記されます。
表の1行目にあるように、手付契約では「解約手付」というのが最も一般的です。方法としては、買主が手付(金)を放棄するか、売主が手付(金)の倍額を払うか、いずれかで解約ができます。
ややこしいですが、Xさんの場合は買戻しの話なので、リースバック業者がXさんに手付金250万円×2倍の500万円を払えば解約できてしまう、ということになります。また、表の「解約の可否」欄にあるように、「手付解除期限」が設定されていれば期日までは解約が可能。契約書の「手付解除期限」は読んで字の如く、契約締結後、「手付解除」できる「期限」はいつまでですよ、という項目ですので、Xさんの場合、契約書にこの項目があれば、期日(だいたい契約締結から1ヶ月以内程度)までは解約手付の履行が可能……でした。
書いていないから「違反にならない」のか「履行できない」のか
ところが、Xさんの契約書には「手付解除期限」の項がない。問題のキモはここです。
すぐさま弁護士の先生に連絡を取り、相談に行ったところ、「この契約書では、民法上はいつでも手付解除を行える状況になっています」という、唖然とするような回答。つまり記載がないということは、制限や抑止についての取り決めそのものがないわけで、「書いてないのだから、履行しても契約違反になりませんよね。そもそも、俎上にない話ですから」ということになります。
当然ながらXさんは解約手付のことなどは知りませんし、一方の相談を受けた私は、「書いてないのだから解除はできないでしょう」と、逆の解釈をした。めったに起こるような事案ではないだけに、この結論には驚きを隠せませんでした。
「民法第557条第1項に定める手付倍返しによる契約解除権に基づき、同契約を解除」と通知書にある通り、Xさんは法的にも対抗できず、双方の弁護士で協議の結果、定期借家契約終了と共に退去。弁護士が交渉し、引越し協力金は相当額を受領しましたが、なんとも後味の悪い話です。
地価が上がれば、約束は変わるのか ――「損得」より「善悪」
不動産業界に長く身を置く私自身も、一度締結した売買契約を後から解約することは、手数料の発生や相応の事情がない限り行わない、という業界の不文律のような認識を持っています。基本的には「解約しない」前提で物事を進めるのが通常の考え方です。
また、リースバック契約と買戻し契約は実質的にセットのように捉えられることも多く、その前提が崩れると、買い戻す側は「はしごを外された」と感じるのも無理はありません。法的に成立し得るとしても、信義則の観点からは違和感が残ります。
もちろん、業者側にもやむを得ない事情があったのかもしれません。ただ一方で、この3年間でXさんの居住エリアの地価が大きく高騰していることも事実です。買戻しを認めるよりも、第三者へ転売したほうが利益を見込める――そうした判断が働いた可能性は否定できません。言い換えれば、約束を守るという「善悪」よりも自分たちの「損得」が優先された、ということなのかもしれません。
リースバックは、相場の7~8割程度の価格で売却することが一般的ですが、「将来的に買い戻せる」というオプションが付いていることに価値があります。買戻しを目的としてリースバックを選択したにもかかわらず、その約束が果たされないのであれば、結果としては安価で売却し、家賃を払って数年住んで、最終的に退去しただけ、という形になってしまいます。
言うまでもないですが、これは感情的に簡単に受け入れられる話ではありません。そのため、弁護士を通じて交渉を行い、引越し協力金や立退料など、最低限の補償については一定の目処を立てることができました。
重大な齟齬を回避するために
リースバックという手法の認知が拡大している昨今ですが、再売買予約契約で手付金がある場合(手付金はないことが多い)は、「手付解除期限」や「違約金の額」をしっかりと確認することが重要です。リースバックの場合、賃貸借契約と再売買契約は別の契約で、契約書ももちろん異なります。将来的に、特に買戻しに関わる親族などにさまざまな点で重大な齟齬が起きないように、契約締結の際には一度専門家の目を通すことを強くお勧めします。
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