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「合法」と「正義」は違う――それでも騙される側が悪いのか?

住宅ローン問題支援ネット の高橋愛子です。

住宅ローン問題、任意売却、債務超過、競売、離婚問題、相続問題……。当NPOには本当にさまざまな相談事が持ち込まれます。当事者から直接のこともあれば、そのご家族、知人・友人の方からご連絡いただく場合もあり、状況、年代、性別、背景も千差万別。ただ一点、当事者に共通するのは、ほぼ全員の方が、その時、待ったなしの人生の岐路に立たされているということです。

先日、非常に印象深い一件がありました。70代の女性からで、当初はリバースモーゲージについてのご相談だったのですが、聞けば、そこまでの経緯があまりにクラシカルな、驚きの連続的展開。驚きというか、私もさすがについぞ接することがなかったな、という衝撃とともに、ここでもお話ししたいと思います。


※これはChat GPTで作成したイメージイラストです

紹介された借入先は不動産会社

その方は、ご自宅はマンションで住宅ローンはとうに終わっています。お金に少し余裕があったので、老後を考え投資に挑戦してみようと初めてその世界に足を踏み入れたところ、詐欺の手口に引っかかり、あっという間に600万円の負債を負ってしまいました。困った女性はマンションを担保に借入を考えますが、その詐欺まがいの関係者から借入先として紹介されたのが、某不動産会社を営む男性でした。
多少の不安はありつつも、「高齢だから金融機関では借り入れができない」などと言いくるめられ、この男性にマンションを担保に借入れを申込み、600万円を借りることになりました。

積み上げた現金を前に記念写真!?

ところが。
女性が当NPOに相談資料として持参した金銭消費貸借契約書(金消契約書)を見て、私は「え?」と思わず声をあげてしまいました。契約書には、この女性が男性の事務所で契約している時の写真数点が貼付され、最後の1枚は、600万円の現金をテーブルに並べたところに関係者全員が立ち合っての「記念撮影」のような写真(上のイラスト参照)。すべてに割印も押されています。大昔の消費者金融や貸金業者では、こういった方法で金消契約を結んでいたと噂には聞いたことがありましたが、令和の現代にまだ絶滅せずに残っていたとは……。

女性は、「途中から金利が上がって、月の返済が7万5,000円から10万円に上がった」とも言います。「……?(なんだかおかしい…)」と思いながら内容を見ていくと、そこにはさらに「ええ?」と声を上げてしまうような内容が書かれていました。

最初から、善意の皮を被った悪意だったのでは

借入金600万円。これはいいでしょう、実際に借りています。しかし問題はその後です。

利息15%/年、返済期日は借入から3ヶ月後。遅延損害金20%/年。しかも元利均等返済(元金+利息の返済)ではない。返済方法は現金持参のみ」

約定期日は、3ヶ月間。つまり借りた3ヶ月後には600万円を一括返済しなくてはならない。この期間の短さも驚きですが、元金均等返済や元利均等返済ではなく、元金一括返済のため元金は一切減らず、利息だけを毎月75,000円も支払わねばなりません。3ヶ月後に一括返済できなければ利率20%の遅延損害金が発生しますから、毎月の支払いは約10万円に上昇。女性が「返済が10万円に上がった」と言っていたのは、遅延損害金のことだったんですね。
いずれにしても、普通に考えて、年金受給者である70代の高齢者が毎月支払える額ではないでしょう。

女性のマンションの査定額は5,000万円ほど。最初からこれを狙っての、善意の皮を被った悪意なのではないか? そう受け取られても不思議はないような契約内容としか思えませんでした。女性はわずかな貯蓄を切り崩し、アルバイトもしながら頑張って払っていましたが、それもとうとう限界に達し、当NPOに駆け込んでこられました。

まずできることは一日も早い借り換え

女性は公的な窓口に相談にも行ったそうですが、金消契約書を交わしており、利息15%も遅延損害金20%もギリギリ違法にはあたらないという理由で、対応はしてもらえなかったとのことでした(女性は過去に法人の代表者をしており、現在はほぼ営業していませんが、その法人での借入れだったため、総量規制にも引っかからない状況でした)。
状況がどうあれ、借りてしまったものは仕方ありません。女性もそこは理解していますが、いかんせん、この条件ではいずれにしても早晩、破綻です。そこで私は、まずできることは一日も早い借り換えだろうと考え、請け合ってくれそうな不動産担保ローン会社にコンタクトを取って、金利も大幅に軽減、年金収入だけでも返済可能な条件で至急借り換えの手続きを進めました。

債権者である不動産会社の男性からは、「現金で貸したのだから、振込ではなく現金で返してくれ」と、貸金の返済金もすべて現金を持参するようにと言われたそうで、怯える女性に私も付き添って、その会社の近くで待機していることにしました。

現金で貸したから現金で返せ――。その理屈は、果たして社会に通用するものなのでしょうか。私にはわかりません。

合法だが非常識。しかし人道的な寄り添いはない

今回の一件はまた、いろいろなテーマを含んだものだったと思います。

表向きは「合法」な金消契約書。しかし条件面も手法も、社会通念的には非常識です。借りた側は「騙された」と訴えますが、公的機関は「合法である」ことを盾に対応しない。最悪の場合、返済に苦しむこの女性の身に何か起きたとしても、人道的な救済の手は、少なくとも公的機関からは差し伸べられることはありません。
フラット35の投資物件トラブルに苦しむ若者たちのことを、ふと思い出しました。話の質が、少し似ているんですよね。「騙す」「騙される」の構図も同じです。

騙すほうが圧倒的に悪い

これまでのブログでも何度か書いていますが、悪徳のプロ、専門家が素人を騙すなど、本当に容易いことなのです。「無知は罪なり」と言いますが、たとえいくばくかの知識があったとしても、悪徳のプロの手口に対抗するのは至難の業。私は、そんな目に遭ってきた方々をこれまで山ほど見ていますから、「騙されるほうが悪い」などと、そんなに軽々には言えません。「騙す」「騙される」なら、「騙す」ほうが圧倒的に悪いのです。ましてや金融業でもない不動産業者が、このようなあくどい貸金をしていることを、腹立たしく思いました。

今回の女性は、もう少し早く相談に来てくださっていれば、こんな悪条件でお金を借りることはなかったと思います。年齢が上がれば、ちょっとした判断力も鈍ってくるのは普通のことです。特にお金にまつわることは、本人が思っているほど単純な話にはなりませんから、いざ借入をしなくてはならない時に、どこからいくら、どんな条件で借りるのか、絶対に一人で決めるようなことはしないでほしいと思います。
話が進行している途中でも、何か少しでもおかしいと感じたら当NPOのようなところに相談することを、強くお勧めします。

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