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管理費滞納を放置すると「59条競売」に? 甘く見てはいけない現実

住宅ローン問題支援ネット の高橋愛子です。

ここ数年、マンションの区分所有者が払う「管理費」の値上がりが続いていること、ご存知でしょうか。
今年5月に、東京新聞ではこんな記事が掲載されていました(記事はこちらから)。それによると、この6年間で、東京都心9区の新築マンションの管理費は平均34%も上昇したとのこと。昨今の資材、人件費の高騰などが大きく影響しているとみられ、都心部以外でも、管理組合への管理会社からの値上げ要請が相次いでいる、と結んでいます。
所有者で居住している以上、管理費を払うのは当然の義務ですが、月々の住宅ローンにさらに数万円の出費が加わるのは、確かに楽な話ではありません。

管理費滞納による法的手段とは?

NPOにも、こんなご相談がありました。
30代の女性が4年前に単身、マンションを購入。フルローンを組みましたが、経済的な事情で割と早い段階から管理費、修繕積立金(以下、管理費等という)が払えなくなり、積もり積もってとうとう100万円まで滞納してしまったそうです。管理組合の弁護士から督促状が届き、すぐに支払えない場合は法的手段もいとわない、と書かれている。女性は、滞納している間、特に何も対処はせずに放置していたそうですから、このくらいの督促状が来るのは仕方ないことです。
女性からは「でも私は住宅ローンもまだまだ残っているので、法的手段と言っても、競売にはならないですよね? 何か起こるとしたら、どんなことが考えられますか?」と聞かれたので、私は「59条競売」について説明を始めました。

区分所有法第59条。管理組合は競売申立ができる

分譲マンションには「区分所有法」という法律があり、その第59条には「区分所有権の競売の請求」が定められています。これは、区分所有者が管理費等を滞納し、マンション入居者との共同生活に著しい支障をきたす場合に、管理組合が裁判所に申し立てて、その所有権自体を競売にかけられるという非常に厳しい規定です。

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(区分所有権の競売の請求)

第59条  
1.第57条第1項に規定する場合において、第6条第1項に規定する行為による区分所有者の共同生活上の障害が著しく、他の方法によってはその障害を除去して共用部分の利用の確保その他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難であるときは、他の区分所有者の全員又は管理組合法人は、集会の決議に基づき、訴えをもつて、当該行為に係る区分所有者の区分所有権及び敷地利用権の競売を請求することができる。

2.第57条第3項の規定は前項の訴えの提起に、前条第2項及び第3項の規定は前項の決議に準用する。

3.第1項の規定による判決に基づく競売の申立ては、その判決が確定した日から六月を経過したときは、することができない。

4.前項の競売においては、競売を申し立てられた区分所有者又はその者の計算において買い受けようとする者は、買受けの申出をすることができない。

※太字、下線は筆者
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つまり、管理組合は、区分所有者に対して競売の申し立ては可能、ということです。
少し知識のある方でしたら、「競売にしても、管理費の回収は優先債権者に配当されるから、管理組合自体は滞納分の回収はできないのでは?」と考えるかもしれません。「だから、競売申立をされても無剰余取消しになるでしょう」という予測まで立てるかもしれない。

しかし、それは大きな間違いです。

回収よりも退去してもらうことが目的

「管理費の滞納くらい…」と軽く考えてしまう方もいますが、この59条競売によって強制的に区分所有権を失うリスクがあるのです。
59条競売は管理組合が強制的にその専有部分を競売請求できる特別の制度で、滞納金の回収はもちろんですが、それ以上に、滞納した区分所有者にマンションから退去してもらうことを目的としています。なぜなら、管理費の滞納が多い物件は、結果的に資産価値が下がるからなのですね。
一人の居住者が3ヶ月程度滞納しているくらいであれば、解消もそんなに難しいことではないでしょう。しかし額が100万円以上と高額でさらに増え続けていたり、滞納者が複数人いたりする場合、入居者の信用性が問題になってきます。簡単に言えば、払える経済力がない入居者と見なされ、マンションの対外的な心証が悪くなる。不動産は「資産」ですから、優良な居住者を管理することも、価値を維持するためには必要なこと。入居者は、区分所有法で守られているわけです。

滞納してもブラックにならないから…

また、59条競売は管理組合にとってもメリットがあります。滞納分の管理費は競売落札者に支払い義務が承継されるため、落札されれば管理組合は回収ができます。もちろんその一方では、競売に踏み切るには区分所有法の3/4以上の賛成を取ったり、費用もかかります。申立てても裁判所が許可しなかったり、最終的には判決を取る必要があるため時間もかかる、といったデメリットもある。
申立て自体は可能ですし、落札されれば回収できますが、そうは言っても、実際はそんなに簡単なものではないのが「59条競売」と言えるでしょう。

管理費の滞納が意外と起こりやすいのは、これによって「信用情報に傷がつく(=ブラックリストに載る)」わけではないことが大きいのではないかと思います。住宅ローンやカードローン、クレジットカードの支払いは、信販会社での審査を通して始めて成立するものなので、滞納すればブラックリストに載ってしまいます。しかし管理費や、たとえば固定資産税などの税金は該当しない。税金は滞納するとすぐに国から督促が来て、最悪、差押えが入るのでそれでも支払いの優先順位は高いほうですが、どうしても後回しにしがちなのが管理費等です。

管理組合が感情論に立った時

先ほどの相談者の女性は59条競売のことは知らず、説明を聞いて「どうしたらいいですか!?」と慌て始めました。管理組合にとってのデメリットもあるので、通常は、よほどの金額を滞納しないと59条競売には踏み切らないだろうなとは思います。しかし、管理組合の立場に立てば、申立てる時にはかなり感情論的になっているとも考えられ、管理費の回収よりも「滞納する悪質な居住者をマンションから追い出す」ことが一義になっていることもある。そうなると、滞納分を払えば終わる、という単純な話では済まなくなる可能性もあります。
私が以前、相談を受けた話では、59条競売を申立てられ、滞納分を全額払うと言っても管理組合は競売取下に応じず居住者排除の姿勢を貫いた、といったものがありました。

今回の相談者の女性には、まずは督促状を送ってきた弁護士に連絡して、分割ででも払うという意思表示をして支払いをすること。また、管理費等の支払いの優先順位を重く考えることをを理解してほしいと丁寧に伝え、送り出しました。

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