住宅ローン問題支援ネット の高橋愛子です。
このブログでも幾度となく取り上げている「住宅ローンでの投資物件トラブル」の問題(過去のブログはこちらから)。悪徳不動産業者に騙される形で住宅ローンを組んで投資物件を購入してしまい、業者はその利ザヤを抜いて違法に儲ける(つまり業者はその物件にかなりの高値を付けているわけですね)、というもので、特に若い方がこの手口に乗せられてしまうケースが本当に後を絶ちません。投資物件トラブルに関しては、被害者による集団訴訟が起こったり弁護団が発足するなど深刻な社会問題化しており、少し前にも、投資物件絡みの組織的な犯行ということで、数名の逮捕者が出たという報道がありました。
住宅ローンで投資物件を買うのは不正行為です
何度でも言いますが、「住宅ローンを組んで投資物件を買う」ことは融資契約違反。れっきとした不正行為です。金融機関の知るところとなれば、契約違反として融資金の一括返済を求められるケースもあります。当NPOへのご相談でも、投資物件トラブルに関連するものは離婚問題に次いで多く、全体の4割近くを占めるほど。程度の差こそあれ、いかに被害者が多いかの証左と言えると思います。
根深い投資物件トラブル
最近も、住宅ローンでの投資物件トラブルでかなり厳しい状況に立たされている相談者の方がいらっしゃいました。サブリースも絡んで話は複雑化しており(サブリース関連のブログはこちらから)難題だったのですが、相談者の方は精神的にもかなりダメージを受けておられ、改めて投資物件トラブルの根深さを考えさせられました。
そこで今回は、私がまとめた8つの「状況によって取り得る対策」について下記に挙げてみようと思います。8つのうち7つは、6年ほど前のブログで書いたものですが、そこにもうひとつ、策を加えました。
住宅ローンで投資物件を購入してしまった時の8つの対処法
①競売または任意売却の後、残債を法的整理もしくは私的整理する
売却しても残債が残る場合は、その後の整理方法を検討します。
◆法的整理は、自己破産だけではありません。自己破産して法的に整理するという方法もありますが、どうしても自己破産したくない、できない、という人は、「個人再生」ならば自宅を残しながら数年で整理できる場合もあります。
◆私的整理の場合は、残債を一括返済できない限りは支払っていかなくてはなりません。分割返済か一部返済で和解する方法もありますが、原則的には全額一括返済ですので、ご自身で交渉していく必要があり、難易度は高いです。
法的整理、私的整理、いずれの場合も弁護士費用・期間・制約があるため、専門家への相談は必須です。
②不動産会社に損害賠償請求する
不正な販売・虚偽説明などがあった場合は、損害賠償請求することも選択肢のひとつです。ただし、「取れるかどうか」は案件次第です。また、時間がかかるため、この訴訟が適切かどうかの判断が重要になります。
③不動産業者の営業保証金から弁済を受ける
不動産業者に宅建業法違反が認められる場合、保証金から弁済を受けられる可能性があります。ただし、金額は本店 1,000万円、支店 500万円の限度があり、申請の“早い者順”なので、その不動産業者に対して複数の申請があると取れない可能性が高い。また、申請~審査までは数ヶ月から1年かかります。
④不動産業者に買取してもらう
売主が不動産会社で、不正が明らかなケースでは、「損害賠償の代わりに購入時の金額で買い取ってほしい」という交渉が通ることがあります。ただし、不動産業者に資力があることが前提であり、また不正が軽度である場合は応じない可能性が高くなります。
⑤投資用ローンへの借換えを行う
住宅ローンではなく、投資用ローンに切り替えて、投資物件として所有し続ける方法です。債務超過の場合は追加で資金が必要になる可能性がありますが、借換えができれば信用情報に傷がつくことはありません。
⑥投資物件として所有し続ける
金融機関から一括返済を求められていない場合は、物件の「継続保有」も選択肢のひとつです。ただし、融資契約違反であることには変わりないですから、将来的に金融機関が動く可能性はあります。また、継続保有して投資物件として運用していくためには、収益改善の努力(付加価値向上・賃料見直し)が必要になります。
⑦賃借人に退去してもらい、自分で住む
元々投資物件のつもりでも、「自ら居住する」のであれば住宅ローンの本来の目的に沿うため合法です。ただし、賃借人は借地借家法により権利がかなり強く保護されているため、退去してもらうのはかなりハードルが高いのが現状です。また将来的に売却する際、オーバーローンになっていると身動きが取れなくなる恐れがあるため、住宅ローンの返済負担が生活を圧迫しないか注意が必要です。
⑧賃借人に買取ってもらう
今回、加えたのがこの方策で、実は成功例も多い方法です。賃借人に、
「このままだと競売になり、6ヶ月以内に退去を求められます」
「でも、もしいま購入していただけるなら、そのまま住み続けられます」
と丁寧に説明すると、検討してくれる入居者(賃借人)は想像以上にいます。抵当権設定後の競売で所有権を得た競落人は、入居者の賃貸借契約を承継する義務を負わないため、立ち退きを求めることができ、賃借人は保護されません。落札して売りたい競落人と、そのまま住み続けたい入居者、双方のメリットが一致しやすいのがこの方法のポイントになります。
ただ住んでいただけなのに――青天の霹靂
住宅ローン投資物件トラブルでの被害者は誰かといえば、それは契約違反であることを知らずに住宅ローンを組み、投資物件を購入してしまった本人です。しかし、それだけではありません。金融機関もまた、本来想定していない損害を負わされるという意味では被害者といえます。そして、結果として一番迷惑をかけてしまう可能性が高いのは、何も知らずにその物件を借りて住んでいる居住者(賃借人)です。
ひとたびトラブルが表面化すれば、賃貸借契約の継続が不安定になったり、競売や売却に巻き込まれたりと、居住者もまた、完全に被害者となってしまうのです。
敷金・礼金を払って普通に大家さんから借りて住んでいただけなのに、「オーナーが不正融資を受けていて、この物件は競売になりましたので退去してください」と、突然通告されるわけですから、まさに青天の霹靂です。
先ほども書いたように、居住者は競落人には対抗できないため、半年の猶予は与えられるものの、絶対に退去しなくてはなりません。加えて、敷金の返還義務は旧オーナーにあるため競落人に請求もできません。居住者は、言わばただのとばっちりで、かなり気の毒な立場に置かれてしまうのです。
成功事例が増えつつある「賃借人による買取り」
私はこんな様子をこれまで何度も目にしてきて、この数年は、「賃借人さんに買取ってもらうこともひとつの選択肢ですよ」と相談者の方にお話しするようになりました。私は弁護士ではないので代理人にはなれませんから、買取りに関する交渉は弁護士か所有者の方にしていただかないといけませんが、この方法の成功事例が少しずつ増えているのは事実です。
今回ご紹介したように、対処法は8つありますが、正解はあくまでも人の数だけ、事案の数だけあるものです。そして、家族構成、収入状況、残債の額、入居者の状況、物件の収益性、金融機関の姿勢――これらによっても、最善策は大きく変わります。
「どれが正しいか」ではなく、状況を正確に把握し、時に専門家の力を借りながら、最適な出口を選ぶことが重要です。
小さな疑問、ご質問でも構いませんので、何かあれば遠慮なくご相談ください。
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