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『ルポ 秀和幡ヶ谷レジデンス』から考えさせされる「マンション管理」のこと

住宅ローン問題支援ネット の高橋愛子です。

『秀和レジデンス』というマンションの名前、聞いたことはありますか? 
1964年に第1号が東京・青山に完成後、高度経済成長の波と国の「持ち家政策」推奨とともにその数を増やしていった、いわばヴィンテージマンションの先駆けともいえるマンションシリーズです。青い瓦のような屋根に白いうろこ風の壁、ベランダの洒落た鉄格子の…と言えば、ピンとくる方はいるかもしれませんね。
秀和レジデンスシリーズには根強いファンがおり、築50年を超えてなお高額で売買がされています――ひとつの物件を除いては。

独自すぎる管理体制で「渋谷の北朝鮮」とまで…

今年の春ごろに刊行された『ルポ 秀和幡ヶ谷レジデンス』(栗田シメイ/毎日新聞出版)を読みました。
秀和シリーズのひとつ「幡ヶ谷レジデンス」はその独自すぎる管理体制により「渋谷の北朝鮮」とまで言われた物件。管理組合と居住者(区分所有者)たちの間で7年にもおよぶ闘争が繰り広げられた末に、住民側の勝利で新体制が発足するまでを追ったノンフィクションです。

あまり書くとネタバレになってしまうので控えますが、「独自すぎる管理体制」とは、たとえばリフォームの禁止(それゆえに、風呂はバランス釜のまま)、物件購入・賃貸申込の際に管理組合による面接がある(落とされることが普通にあるため、結果、購入できない、またオーナーはずっと賃貸に出せない)、引越しで転入の際に荷物チェックがある、親族・知人を泊めた場合1人当たり5,000円を徴収、17時以降は介護者やベビーシッターの出入不可、Uber Eatsなどの入館NG、といった具合。

人気のヴィンテージマンションシリーズで、しかも超がつくほど都心の好立地にあるにもかかわらず、販売価格はほかの秀和レジデンスよりかなり低く、また同じエリアの物件と比較した資産価値としてもだいぶ低く見積もられている――等々、秀和幡ヶ谷レジデンスは、聞いただけではにわかには信じられないようなエピソードに満ちた物件だったのです。

「無関心」の積み重ねが生み出したモンスター

不動産業界に身を置く者として、この独自すぎる管理体制に強い違和感を持ったことは言うまでもないのですが、それと同時に私が感じたのは、秀和幡ヶ谷レジデンスに限らず、マンション区分所有者の「物件管理」に対する認識の難しさという点でした。

マンションを買う=区分所有者になる、ということは、その部屋は自分のものであっても、集合住宅である以上、マンションそのものは共有物でもあるわけです。入居したら管理組合の組合員になりますが、でも、組合活動を通してマンションの資産価値を維持し、ひいてはさらに価値を上げていくためにみんなでがんばっていこう、という感覚の方はまずいない。多くは、輪番制で回ってくるマンション理事を仕方なく引き受け、最低限の活動だけをこなしたり、理事でなければ委任状を提出して「あとはお任せします」というスタンスを貫く方が大半です。
しかしこういった「誰かがやっておいてくれるだろう」という無関心な感覚が積み重なった結果、秀和幡ヶ谷レジデンス管理組合のようなモンスター体制を生み出した…ということは言えると思っています。

破綻寸前の管理組合も実は多い

「マンションは管理を買え」というくらい、管理組合や管理状況はとても大事なものです。居住者が率先して動かなくても、きちんとした管理組合が存在し、管理会社も信頼できるところでマンション運営がちゃんと回っているのであれば問題はないのですが、実のところ、どこのマンションもそうとは限らないことは、理解しておいたほうがいい。ずさんな管理のところは管理費滞納や負債を抱えているケースがありますし、破綻寸前の管理組合も実際に多いのです。そういった状況は、資産価値の低下にも直結します。
マンションを買った事実に満足する気持ちはもちろん理解できますが、その後の維持・管理の重要性は、これから購入を考えている方も、すでに購入済みの方も、頭に入れておいていただきたいと思います。

一人のブレない女性の元に協力者が集まる

本書のなかでは、独自すぎる管理体制を率いる管理組合と、声を上げた居住者のグループが対立します。居住者グループの中心となって仲間の心をつかみ、動かしていく一人の女性に、とても心揺さぶられました。一本筋が通っていてブレない姿勢、感情を表に出さず、周辺の人たちから「一言でいえばクールな人」と評される彼女は、途中、病を発症したり、内面では何度もくじけそうになりますが、それを仲間には言わず、一念岩をも通すとばかりに押し進める姿にどんどん内外に協力者が増えていきます。彼女に共感したと同時に、人を動かす組織論としても、非常に勉強になりました。

行動のすべては「マンションを守るため」

もうひとつ、気になるのは今回「悪」のトップとして登場する理事長です。この人は、いつから、何がきっかけでこのような強権を発動するようになったのか。過剰な管理体制を敷いてまで守りたかったものは何なのか。本書では理事長への取材はできておらず、真相はわかりませんが、周辺取材から浮き上がる人物像は、極端に「真面目」な人であるということ。かつては酌み交わしたこともある、という人の証言からは、理事長の行動のすべては「マンションを守るため」だったことがうかがえます。実際、この管理下において築50余年の秀和幡ヶ谷レジデンスは非常にきれいに保たれており、また居住者以外の外部との接触を徹底的に管理することで高い安全性は担保されていた、という別の証言もありました。

人を動かす圧倒的な「熱量」

読み終わってみれば、そのままドラマ化できそうな物語です。ややもすれば、「とあるマンションのちょっと強烈な騒動」くらいで終わる可能性も十分にあったこのエピソードを、登場人物たちの熱量に突き動かされ、問題提起とともに1冊の本に仕上げた栗田シメイさんという筆者の熱量にも、感銘を受けました。

これもネタバレになってしまうのでさわりだけですが、「あとがき」のなかで栗田さんが吐露する書き手としての矜持は、いろいろな業界にも通じる話のような気がしました。当事者も関わる側も、人を動かすのは圧倒的な「熱量」で、そこにはうわべだけの理屈や予定調和な考え方、私欲といったものは当てはまりません。

マンションを持っている方には、ぜひ読んでみていただきたいと思いました。
なお、新しい管理組合体制になったことで秀和幡ヶ谷レジデンスの独自ルールは廃止となり、マンション価格、資産価値は向上しています。冒頭に挙げた東京・青山の秀和レジデンス第1号は今年建替えが完了し、タワマンとして生まれ変わりました。

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