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実家を手放すという辛い決断は、喪失なのか承継なのか

住宅ローン問題支援ネット の高橋愛子です。

不動産業界の専門紙『住宅新報』の9/23号に、「定借マンションの未来 最高の利用価値提供 「所有」との比較脱却」という記事がありました。これからますます加速する日本の人口減を背景に、「定期借地権マンションの本来の魅力は何か」について書かれたもので、筆者は、家は賃貸ではなく所有してこそ、という古い考えから脱却し、人生をポジティブに戦略的に生きていくために定期借家も有効活用して「人生の未来設計を楽しむということだ」としています。
この記事を読んでとても納得させられたと同時に、先日終結したあるご相談を改めて思い返しました。

相続で実家の売却を決めたものの…

ご相談は、実家の相続についてでした。家は都内の一等地にあり、相続税も相当な額になります。相談者の方はなんとか家を残せないかとあらゆる方法を検討していましたが、同じく相続人となる親族の賛同を完全には得られず、最終的には売却する決断をされました。弊社に相談にいらっしゃったのは、売却の決断をしたものの、ご本人が心の底では納得しきれていなかった面もあったのかもしれません。専門の第三者に、話を聞いてほしいという気持ちも少なからずあったのだと思います。

町の長老のような威厳をまとう佇まい

「できれば実家を守りたかったけれど、相続税もあり、一人では維持できないんです」
そう切り出した相談者さんの言葉が印象に残っています。

私は詳しくお話をうかがい、一緒にご実家を見にも行きました。家は築60年近い物件で、かなり年季の入った、今後住むとしたら明らかに大規模修繕が必要になりそうな古家です。ただ、そんな状態でも、これまでとても丁寧に暮らして(使って)きたことがよくわかる家の佇まいがあり、見た瞬間、ハッとしたのですね。古いけれど、とてもきれいで得も言われぬ味わいがある。かなり老朽化はしているけれど、長い間その土地と共にあった威厳のようなものも感じる。久しぶりに町の長老のような家に触れて、心がふわっと温かくなったものでした。

これ以上住めないほどに「使い切った」

少しでも相談者さんの気持ちが軽くなるように私も伴走し、幸い、とてもよい買い手の方を見つけることができました。契約は順調に完了し、引越し作業開始です。時折、相談者さんに連絡をして進捗の様子を聞いていましたが、いよいよ最終段階に入るということで、私は再び、ご実家を訪れました。

荷物がすっかり運び出され、がらんどうのようになった居間に立った相談者さんが、声を響かせて言いました。
「もうここは人のものになってしまいました。やっぱり寂しいですね。親やご先祖様に申し訳ないです」
私はこの家に関わる当事者ではありませんが、長年住み慣れた家を手放す決断は、たとえ前向きな理由があったとしても、心の痛みは伴うものです。それはとても理解できます。しかし、家財道具がなくなったことで、壁や床、柱のひとつひとつが却ってしっかりと輪郭を持ったように見えるこの家の中に漂っていたものは、ご家族が紡いだ「大切に過ごしてきた時間」のように、私には感じられました。勝手な感想かもしれませんが、相談者さんのご家族は、「この家を本当に、もうこれ以上住めないほどに『使い切った』んだな」と思ったのですね。だからこそ、家財という思い出のモノが消えても、気配は残っていたのだと思います。

手放したのではなく、つないだ決断

先代から受け継いできた土地は住環境もよく、結果的には高額での売却ができたため、相続人の皆さまで資金を分けて、それぞれが、新しい生活の場を整えることができました。不動産というのは、「人」と「土地」が深く関わり合うもの。育った環境や場所は、間違いなくその人の人生を形づくります。だからこそ、そこを離れることは言葉にできないほど寂しく、守れなかったという無念さが湧くのも当然のことです。
ですが、「使い切った家」が次の世代の人たちの人生を支える資金となり、またその土地が、購入した新しい家族に受け継がれていく循環が生まれるのなら、ご両親もご先祖様も、きっと納得してくれているのではないでしょうか。
今回の相談者さんの決断は、大切なものを「手放す」「喪う」というマイナスなことでは決してなく、次の世代に「つなぐ」というプラスの行為だった。私はそう信じています。

二人で並んで立つ居間でそのまま相談者さんに伝えると、「そうか、そういうふうに考えればいいのかもしれない……」と、しばらく黙っておられました。

「所有の価値」と「利用の価値」

冒頭で紹介した『住宅新報』の記事に、「“賃貸は仮住まい、持ち家は一生”という膠着したこれまでの古い思考から脱却して」とありますが、実際、日本人は特に不動産について所有権を持ちたいと考える人が多く、その強いこだわり(=執着)が、場合によっていろいろな問題をはらんでしまうことがあります。価値観はそれぞれですので否定はしませんが、究極のところ、あらゆるモノは、自分がこの世を去るときに持って行けるわけではないという根本的なことに目を向けると、「所有の価値」と「利用の価値」の考え方に少し変化が出るかもしれません。これは、不動産を買う時に定期借地権付きの物件を選ぶか、そうではない物件を選ぶかにも通じることです。

自分が生きている、いまをいかにして豊かなものにするか。ちょっと仏教の教えっぽくもなりますが、そういった発想も、時には自分の心を落ち着かせてくれるものではないでしょうか。
相談者さんとは再会を約束し、笑顔で別れました。とても前向きで清々しいお顔をされていました。

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